東京の夕景
diary
diary 2026.05.31 1 min read

東京Meetupと、初めましての二日間

釧路から東京へ飛んで、ミートアップに出て、ネット越しの友だちと初めてリアルで会った。神社に参り、喫茶店をハシゴし、ひたすら歩いた二日間の記録。

東京でミートアップがあるというので、釧路から飛んだ。

目的はそのミートアップだったはずなのに、二日間を終えてから振り返ってみると、記憶に残っているのは「神社に参って、喫茶店に何軒も断られて、人と会って、ひたすら歩いた」ことばかりだった。やったことを一行で書くとそれだけなのに、なぜかすごく充実していた。せっかくなので、足の痛みが引かないうちに書き残しておく。

一日目:霧、渋谷、そして掟

霧の釧路から

朝、釧路は霧がすごかった。空港へ向かう道すがら、窓の外の乳白色を眺めながら「これはわんちゃん欠航するのでは」と本気で覚悟していた。釧路の霧はわりと本気を出すと飛行機を止めにかかってくるので油断ならない。

が、なんとかなったらしい。飛行機はちゃんと飛んで、ちゃんと降りた。多少の遅延はあったものの、別に分刻みで動く旅でもないのでヨシ。むしろ、旅程に余白があるというのは、それだけで心に余裕が生まれる。「着いてから考える」くらいの解像度の旅は、これはこれで悪くない。今回はその余白に、神社と喫茶店がぽろぽろと落ちてくることになる。

まずは昼飯(渋谷・麻辣湯)

東京に降り立ってまず考えるのは、当然ながら昼飯である。観光地でも名所でもなく、まず腹を満たす場所を探すあたりが、自分の旅の解像度をよく表している。

向かったのは 四川麻辣湯 渋谷星星倶楽部。少し前にネットの片隅で麻辣湯の話題を見かけて以来、頭の隅にずっと麻辣湯が居座っていた。こういう「いつか食べたい」がうっすら積もっていると、旅先の選択肢を勝手に絞ってくれるので助かる。何も考えなくても、足が勝手に麻辣湯へ向かう。

四川麻辣湯 渋谷星星倶楽部

具を選んで、辛さを選んで、すする。旅の一食目としては上々だった。辛さで汗をかきながら、これから始まる二日間のことをぼんやり考える。

麻辣湯

神社を発見したら、参拝しなければならない

腹が満たされたので、渋谷をあてもなくほっつき歩く。目的地を決めずに歩くと、街は急にいろんなものを差し出してくる。そして案の定、神社を発見してしまった。

渋谷の路地で神社を発見

ℹ️

私には「神社を発見したら参拝しなければならない」という掟がある。見つけてしまった以上、参拝は義務である。例外はない。

この掟、もちろん自分で勝手に決めたものなのだけど、おかげで旅先に小さな寄り道が生まれる。たいてい、観光地化された大きな神社よりも、ビルとビルのすき間にひっそりある小さな神社のほうが、なんというか効く。手を合わせて、また歩き出す。たったそれだけで、あてのない散歩に目的らしきものが宿るのだから不思議だ。掟というのは案外、自分を動かすためのよくできた装置なのかもしれない。

カフェ全滅、半蔵門で救われる

参拝を終え、ひと休みしようとカフェを探し始めた。ところが、目をつけていた店が ことごとく全滅した。満席、行列、定休。旅先のカフェ探しというのは、だいたいこの「全滅」とワンセットで提供される。地図アプリのピンを一つずつ潰しながら、じわじわ削られていく。

仕方なくエリアを諦め、半蔵門まで移動することにした。そして半蔵門の カフェ の で、ようやくアイスカフェラテにありつく。

カフェ の のアイスカフェラテ

紫煙機関に感謝。ひとしきり歩いたあとのカフェラテは、もはや糖分というより安心に近い。座れる椅子と冷たい飲み物、それだけで人はかなり回復する。全滅を3〜4軒くぐり抜けてようやく座れた一杯は、味の体感が二割増しになる。これは二日目にもう一度学ぶことになる教訓だ。

ホテル、そしてMeetupへ

ホテルにチェックイン。いいホテルだった。高そう(小並感)。荷物を置いて身軽になったところで、いよいよミートアップ本番へ向かう。

会場までは1〜2kmくらい。「いうても歩けるか」と軽い気持ちで歩き出したのだけど、これが結果的に大正解だった。途中でいい路地に当たり、

いい路地

そして、いい夕景に当たる。

いい夕景

予定にない景色というのは、わざわざ探しに行った景色よりも、なぜか深く印象に残る。「移動」のつもりが、勝手に「散歩」に格上げされていく。少し早めにホテルを出て、ふらふら寄り道しながら向かったのが、結果として一番の正解だった。タクシーに乗っていたら、この路地もこの夕景も、まるごと素通りしていたわけだ。歩くというのは、それだけで街を一段細かく味わう手段なのだと思う。

Meetup、たのしかった

肝心のミートアップは、たのしかった!!!

うまく言語化するのは難しいのだけど、やっぱりカルチャーマッチは大事だなと改めて思い知らされた。同じ温度感の人たちと、同じ話題で同じところで笑える。ネット上ではもはや当たり前のように成立しているその「温度の一致」が、リアルの場でもちゃんと成立すると、なんだか妙に安心する。画面の中で築いてきた関係が、対面でも何ひとつ目減りしない——この感覚は、何度味わってもいいものだ。

帰りも、もちろん徒歩。「行きが歩けたのなら帰りも歩ける」という雑な理論で押し切った。理論というか、もはや意地である。

11.6km、19,418歩

結果、この日の歩数は 11.6km・19,418歩。我ながらよく歩いた。足は当然のように痛い。痛いのだけど、今日歩いたぶんだけ街が記憶に残っている気もして、まあ悪くない痛みだ、と自分に言い聞かせて眠りについた。

二日目:純喫茶ハシゴと、初邂逅

連絡が取れない友人

二日目の朝。この日に会う約束をしていた らふぃ くんと、なぜか連絡が取れない。電話も鳴るだけで反応なし。

らふぃくんは、「ゆに」というユーザー名を使っていた、昨年の10月くらいからの友だちだ。付き合いとしてはまだ半年とちょっと。ネットの上ではすっかり気心の知れた間柄なのに、リアルで顔を合わせるのは、これが初めてになるはずだった。初対面の朝にいきなり連絡が取れない、というのは、なかなかスリリングな幕開けである。

傷心でどこかへ飛んだか、それとも盛大なすっぽかしか、はたまた別の何かか。頭の中でいくつものシナリオが立ち上がっては消える。とはいえ、こちらができることは何もない。連絡待ちで手持ち無沙汰になったので、腹をくくって先にモーニングへ繰り出すことにした。

敷島てとら巡礼、二連敗

モーニングの行き先として参考にしたのは、YouTuberの 敷島てとら 氏が紹介していた喫茶店たち。蔵前のベーカリー直営カフェや、上野三大純喫茶を巡るVlogが、いつのまにか頭にしっかり刷り込まれていた。完全に動画に行動を操作されている自覚はある。が、こういう「誰かの追体験」を旅に持ち込むのは、嫌いじゃない。

まず狙ったのは カフェペリカン。老舗「パンのペリカン」が営むカフェで、名物の食パンをこれ以上ないトーストにして出してくれる、あのお店だ。期待に胸をふくらませて向かったところ——22組待ち。22組。さすがに無理。朝の胃袋は22組ぶんの忍耐を持ち合わせていない。あえなく断念。

気を取り直して 喫茶王城 へ。上野三大純喫茶のひとつである。今度こそ、と意気込んで入ろうとしたら、こちらは 電子決済不可。現金の持ち合わせが心許なく、これまた断念。

二連敗。朝から二軒続けてフラれると、さすがにちょっと心が折れる。喫茶店巡りというより、喫茶店に巡り断られているのではないか、という疑念がよぎる。

またしても神社(下谷神社)

しょんぼり歩いていたら、またしても神社を発見してしまった。下谷神社

下谷神社

掟は掟なので、もちろん参拝していく。連敗中の身としては、むしろここで願っておかない手はない。願うだけならタダなので、遠慮なくいろいろ願っておいた。実現するかどうかは、結局のところ努力値次第なのだけれど、それはそれ、これはこれである。

あとで調べてみたら、下谷神社は 都内最古のお稲荷さん らしい。狙って行ったわけでもないのに、こういう由緒ある場所に勝手に当たるのだから、「神社を発見したら参拝する」という掟も、なかなか馬鹿にできない。連敗の腹いせに引いたおみくじ的な寄り道が、実は当たりだったわけだ。

三軒目、喫茶古城で当たりを引く

そして三軒目、喫茶古城。こちらも上野三大純喫茶のひとつで、敷島てとら氏の動画で見て以来ずっと気になっていた店だ。今度こそ、と祈るような気持ちで向かったら——入れた。ついに当たりを引いた。

喫茶古城の外観

外観からして良い。ここから地下へ降りていく造りになっていて、階段を一段下りるごとに、時代が少しずつ巻き戻っていくような感覚がある。

モーニングCセット

注文したのはモーニングCセット。写真に自分の手が写り込んでしまったのはご愛敬。連敗のあとにありつくモーニングは、昨日学んだとおり、体感で二割増しに美味い。良いお店だった。二軒に断られ、神社に寄り道し、三軒目でようやく腰を落ち着ける——効率だけ見れば最悪のムーブなのだけど、こういう回り道のほうが、後から思い出として濃く残るのはどうしてなんだろう。最短距離でたどり着いたモーニングを、人はたぶん覚えていない。

らふぃくんと、はじめまして

そうこうしているうちに、ようやく らふぃ くんと連絡がついて、無事に合流できた。気になっていた音信不通の理由は——なんてことはない、寝坊だった。あれだけシナリオを想像した自分がばかみたいである。今後は会う少し前に一本電話を入れる、という運用にしよう、という地味な学びを得た。

そんなオチはともかく、ゆに時代から半年あまり、画面越しにしか知らなかった相手と、ついにリアルで対面である。

らふぃくんと初邂逅

で、いざ会ってみての感想はというと——リアルでも変わんないねぇ、の一言に尽きる。声も、ノリも、間の取り方も、距離感も、画面の向こうで知っていたそのまんま。ネット越しの付き合いが長くなると、「実際に会ったら案外しゃべれないのでは」みたいな不安がうっすら芽生えることがある。でも今回は、その不安が拍子抜けするくらい綺麗に外れた。アイコンの中にいた人が、ちゃんと地続きの同じ人としてそこに立っている。当たり前のことなのに、なぜかちょっと感動してしまった。いい子だ。

麺屋 こころ

昼は 麺屋 こころ。店選びは完全におまかせにした。初対面のはずの相手に行き先を丸投げできるくらいには、もうとっくに知った仲なのである。会うのが初めてでも、関係はちっとも初めてじゃない。この捻れた感じが、ネット時代の友だちの面白いところだと思う。

フッ軽魔神・こばさん召喚

午後、そこへ こばさん が合流した。というより、こちらから召喚した。声をかけたらほどなく現れる、驚異のフットワークの軽さ。元MIKUnityの統括プロデューサーにして、私が勝手に「歩くインターネット」とも呼んでいる、自他ともに認めるフッ軽魔神である。召喚に応じる早さが、もはや使い魔のそれだった。

三人でおやつカフェタイムに突入。例によってカフェ探しは難航し、断念リスト(コトカフェ、CAFE WALL、アパルトマン301)がしれっと積み上がっていく。この旅、いったい何軒のカフェにフラれているのだろう。とはいえ「行けなかった店リスト」は、そっくりそのまま「次に来る理由リスト」でもあるので、まあ悪いものでもない。

最終的に落ち着いたのは 珈琲貴族エジンバラ

珈琲貴族エジンバラのケーキセット

ケーキセットを頼んで、アイスコーヒーと生チョコケーキ。美味しかった。みんな元気そうで何より、という、こういう何でもない時間が、結局いちばん良かったりする。特別なことは何も起きていないのに、後から思い出すのはたぶんこの時間だ。

そして帰路

帰り、こばさんはなんと 空港までついてきた。フッ軽魔神の名は伊達じゃない。さよならを言う場所を、わざわざ搭乗ゲートのギリギリまで引き延ばしてくれる人である。挙句、機内に持ち込めない危険物を彼に押し付けてしまった。完全に甘えた。本当に申し訳ない。ごめんよ。

空港では、搭乗口がしれっと変更されているし、案内された32番はバス搭乗だし、で、なんだかんだバス搭乗は人生で初めてかもしれない。そして最後はお約束の 遅延。空港混雑による離陸遅延らしい。まあ、こればかりは仕方ない。考えてみれば、行きも遅延、帰りも遅延で、遅延に始まり遅延に終わる旅だった。律儀である。

この日もよく歩いた

足は今日も今日とて痛い。歩数を見るに、昨日とほぼ同じだけ歩いているらしい。二日間を合計すると、ゆうに30km以上は歩いた計算になる。そのほとんどを、喫茶店ハシゴと神社参りで稼いでいるのだから笑ってしまう。観光名所はほぼ一つも回っていないのに、足だけはしっかり観光している。

おわりに

二日間を振り返って、いちばん大きかったのは、やっぱり らふぃくんと初めてリアルで会えた ことだと思う。

ゆに、という名前で知り合ってから、まだ半年とちょっと。短い付き合いなのに、会う前から妙に親しみがあって、会ったあとは「リアルでも変わんないねぇ」で終わった。ネット越しの関係というのは、長さじゃなくて温度なのかもしれない。半年でも、ちゃんと積み上がっていた。会った瞬間に距離ができてしまうこともある、という話を聞くたびに身構えていたけれど、今回はそういう心配が完全に杞憂で済んだ。これが何より嬉しい。

神社を見つけたら参拝して、喫茶店に何軒も断られて、誰かを召喚して、ひたすら歩く。書き出してみると、観光らしい観光はほとんどしていない。それでも、こういう旅のほうが、たぶん長く覚えている。名所を効率よく回る旅も悪くないけれど、断られたカフェの数だけ、寄り道した神社の数だけ、歩いた距離の分だけ、街と人が記憶に刻まれていく。

足は痛い。でもたぶん、また東京に来たら同じことをするんだろうな、と思う。