東京でMeetupがあるというので、釧路から行ってきた。
Meetup自体は夜の数時間なので、それ以外はまるごと自由時間である。で、その自由時間に何をしていたかというと、神社に参って、カフェに断られ続けて、ネットの友だちと初めて会って、あとはひたすら歩いていた。観光名所には一つも行っていない。行っていないのに妙に満足度の高い二日間だったので、足の痛みが引かないうちに書き残しておく。
一日目
釧路の霧はこわい
朝の釧路は霧だった。それも、うっすら出ているとかではなく、視界がまるごと乳白色になるやつ。
釧路の霧は夏の風物詩みたいな顔をしているが、飛行機に乗る日に限っては完全に敵である。本気を出した霧は普通に飛行機を止めてくる。空港へ向かう道中「欠航したらどうしよう」と考え始めたものの、考えたところで霧は晴れない。祈るだけ祈って、あとは搭乗口で座っていた。
結果、飛んだ。ありがたい。多少遅延したが、こちらは急ぐ旅でもないのでヨシ。東京側の予定はMeetupだけで、それも夜。つまり着いてから夜までは完全な余白である。何をするかは着いてから考えることにした。
まず麻辣湯を食べに行く
羽田に降りて最初に考えたのは昼飯のことだった。
向かった先は渋谷の「四川麻辣湯 渋谷星星倶楽部」。少し前にチャットで麻辣湯の話題が出て、それ以来ずっと食べたかった。ああいう場で誰かが「麻辣湯食べたい」と言い出すと、その場の全員が麻辣湯を食べたくなる。私はその被害者(受益者?)である。
麻辣湯は、具材を選んで、辛さを選んで注文する方式。初手からわりと真剣に悩まされる。
うまい。辛さでじわじわ汗をかきながらすする。旅の一食目としては上々である。
渋谷で神社を見つける
腹が満たされたので、渋谷をあてもなく歩く。特に行きたい場所もないので、ただ歩く。そうしたら路地の奥に神社を見つけた。
私は旅先で神社を見つけると参拝することにしている。信心深いわけではまったくないのだが、見つけた神社を素通りするのはなんとなく落ち着かないのだ。ビルの隙間の小さな神社に手を合わせていると、周りの喧騒から一瞬だけ切り離される感じがあって、これがけっこう好きだったりする。
カフェに断られ始める
参拝を終えて、コーヒーでも飲もうとカフェを探し始めた。ここからが本日の受難である。
目をつけていた店、全滅。一軒目、満席。二軒目、行列。三軒目、定休日。地図アプリのピンを一個ずつ消していく作業をしばらく続けたところで、渋谷で座ってコーヒーを飲むことを諦めた。そもそも渋谷でゆったり座れるカフェを探そうというのが甘かったのかもしれない。
エリアごと見切りをつけて半蔵門へ移動。「カフェ の」でようやくアイスカフェラテにありついた。ちなみに店名は本当に「の」である。検索泣かせの名前だ。
ありがとう紫煙機関。歩き回ったあとの冷たいカフェラテは、飲み物というより回復アイテムである。
歩いてMeetupへ
ホテルにチェックイン。いいホテルだった。高そう(小並感)。
荷物を置いて、Meetup会場へ向かう。地図を見ると会場までは1〜2km。微妙な距離である。電車に乗るほどではない、でも歩くとそこそこある。少し迷って、歩くことにした。時間にも余裕があったので、ふらふら寄り道しながら向かう。
これが正解だった。途中で、いい路地といい夕景に立て続けに当たったのだ。
電車に乗っていたら、どちらも存在すら知らずに終わっていた。1〜2kmという距離は、歩く言い訳としてちょうどいい。
Meetup
たのしかった!!!
中身の詳細は書かないけれど、普段ネット越しにやりとりしている人たちと、同じ空間で同じ話題で笑えるというのは、思っていた以上に楽しかった。カルチャーマッチって大事だなと実感した夜だった。
帰りももちろん徒歩。行きに歩けた距離は帰りも歩けるはず、という理屈である。理屈は合っているはずなのに、帰りのほうが明らかに足が重かった。
この日の記録、11.6km・19,418歩。日常でこんなに歩くことはまずないので、足が痛いのも当然である。ベッドに倒れ込んで一日目終了。
二日目
らふぃくんが起きない
二日目の朝は、トラブルから始まった。
この日は、らふぃくんと会う約束をしていた。らふぃくんは「ゆに」というユーザー名だった頃からの友だちで、付き合いは昨年の10月くらいから。ネット上ではすっかり知った仲なのに、リアルで会うのはこれが初めてになる。
その、記念すべき初対面の日の朝。連絡が取れない。メッセージは既読にならず、電話は鳴るだけ。
人間、連絡が取れないといろいろ考えてしまうもので、寝坊か?すっぽかしか?まさか傷心でどこかへ飛んだか?と、頭の中でシナリオばかりが増えていく。とはいえ、こちらからできることは何もない。待っていても仕方ないので、腹をくくって先にモーニングへ行くことにした。
敷嶋てとら氏のVlogをなぞる
モーニングの行き先は決めてあった。YouTuberの敷嶋てとら氏がVlogで紹介していた店たちである。蔵前のトースト食べ比べの回と、上野の純喫茶を巡る回を見て以来、「東京に行ったらここに行く」と決めていた。行動が完全にYouTubeに決定されているが、後悔はない。面白そうな店を面白そうに紹介されたら、行きたくなるのが人情である。
一軒目はカフェペリカン。老舗「パンのペリカン」直営のカフェで、名物の食パンを使ったトーストが食べられる店だ。よし食パン、と意気込んで到着したところ、待ちが22組だった。
22組。2組ではない。22組である。さすがに無理。断念。
二軒目、喫茶王城。上野三大純喫茶のひとつで、これも動画で見た店。今度こそ、と入口まで行ったところで「電子決済不可」の文字が目に入った。財布を確認する。現金、心許ない。普段キャッシュレスで生きているツケが、上野の路上で回ってきた。断念。
朝から二連敗である。純喫茶を巡っているというより、純喫茶に振られている。
下谷神社
しょんぼり歩いていたら、神社を見つけた。下谷神社。
例によって参拝していく。二連敗の直後なので、願うことはいくらでもある。願うだけならタダだし、叶うかどうかは結局のところ努力値次第。それはそれとして、手を合わせるとちょっと気持ちが立て直るのだった。
あとで調べたら、下谷神社は都内最古のお稲荷さんらしい。ノーマークで寄った場所が実は由緒ある神社だったパターン、地味に嬉しい。
三軒目、喫茶古城
気を取り直して三軒目、喫茶古城。こちらも上野三大純喫茶のひとつ。今度こそ入れてくれ、と祈りながら向かった。
入れた。
外観の時点でもう良い。ここから階段で地下へ降りていく造りになっていて、降りた先が想像の三倍くらいちゃんと「古城」だった。
二連敗の末にありついたモーニングは大変美味かった。良い店だった。上野に行く人には行ってほしい。
らふぃくん、起きる
古城でゆっくりしているうちに、らふぃくんから連絡が来た。無事合流。音信不通の理由は寝坊だった。
寝坊。傷心疾走まで想像した私の朝を返してほしい。まあ、無事ならそれでいい。
そんなわけで、ゆに時代から半年ちょっと、画面越しにしか知らなかった相手との初対面である。
会ってみての感想は「リアルでも変わんないねぇ」に尽きる。声も、ノリも、会話の間も、画面越しに知っていたそのまんまだった。正直、会う前は「実際に会ったら案外しゃべれないのでは」という不安がうっすらあった。ネットで仲良くなった人とリアルで会ったら距離感が狂った、みたいな話もたまに聞くし。でも蓋を開けてみれば、初対面のはずなのに初対面感がまるでなかった。いい子だ…。
昼は麺屋 こころ。店選びは完全におまかせした。考えてみれば初対面の相手に行き先を丸投げしているのだが、違和感は特になかった。会うのは初めてでも、関係は初めてではないので。
フッ軽魔神・こばさん
午後、こばさんを召喚した。
こばさんは元MIKUnityの統括プロデューサーで、自他ともに認めるフッ軽である。声をかけたら本当にすぐ来た。さすがフッ軽魔神。
三人になったところで、おやつカフェタイムへ。そしてここでも、カフェに断られ続けた。コトカフェ、CAFE WALL、アパルトマン301。断念リストが着々と伸びていく。この旅、通算で何軒のカフェに振られたのか、もう数えたくない。
最終的に落ち着いたのは珈琲貴族エジンバラ。
ケーキセットで、アイスコーヒーと生チョコケーキ。美味しかった。三人でだらだらしゃべって、みんな元気そうで何より、という時間。それだけの時間だったが、それがよかった。
帰路、そして遅延
帰る時間になった。こばさんは、なんと空港までついてきた。フッ軽魔神の名は伊達ではない。
しかも空港で、機内に持ち込めない危険物をこばさんに押し付けるという失態までやらかした。持って帰ってもらった。完全に甘えた。ごめんよ。そしてありがとう。
空港では搭乗口がしれっと変更されており、案内された32番はバス搭乗だった。飛行機までバスで移動するやつ、なんだかんだ人生初だったかもしれない。そして最後は、お約束の遅延。空港混雑による離陸遅延とのこと。思い返せば行きも遅延していた。遅延に始まり遅延に終わる旅である。
足はこの日も痛かった。歩数を見ると、昨日とほぼ同じだけ歩いている。二日合計で30km超。東京に何しに行ったんだと言われそうだが、たぶんこれが正しい使い方だった。
おわりに
二日間でやったことを並べると、麻辣湯、神社二つ、カフェ(入れたのは三軒、振られたのは数え切れない)、Meetup、初対面、ラーメン、ケーキ、徒歩30km。観光名所はゼロである。
それでも、いい旅だった。いちばん大きかったのはやっぱり、らふぃくんと初めて会えたこと。半年ちょっとネットで話してきた相手が、会った瞬間からいつも通りだったこと。あれは嬉しかった。
足はまだ痛い。でも、また東京に行ったら同じことをすると思う。神社を見つけたら参拝するし、カフェには振られるし、たぶんまた歩きすぎる。